一般社団法人沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)
沖縄の軍用地に関する問題解決、地主の財産権の擁護及び福利増進を行っています。
八 米国政府、二、一〇〇万ドルの補償決定
ジョンソン大統領は、一九六五年(昭四〇)十月二十七日、上院、下院において可決した補償法案(授権法案)に署名、公布した。そして、一九六六年(昭四一)二月二十一日、総額二、一〇四万ドルの支出法案が議会へ送付され、同年九月二十一日には下院本会議、十月六日には上院本会議をそれぞれ通過して、十月十五日、大統領によって署名、公布された。
これを受けて現地沖縄では、一九六六年(昭四一)十月二十一日、米国民政府ジェラルド・ワーナー民政官から、松岡政保琉球政府行政主席あて、次の内容の書簡が寄せられた。
貴殿に伝えてくれるように、陸軍長官・スタンレー・R・レソー氏から、次のような電文が届いていますので、お伝えします。
「琉球住民から提出された約十八万件の請求に支払いをなすための二、一〇四万ドルの支出法案に、一九六六年十月十五日、大統領が署名したことをお知らせすることを嬉しく思うものであります。」このようにして、関係地主はもとより、沖縄住民にとって多年の懸案であった、講和前補償問題が解決し、補償獲得運動は一応、終止符が打たれ、あとは、支払方法等についての実質的業務の段階に入ることになった。
九 補償金支払い業務を完了
琉球政府では、一九六七年(昭四二)一月十日付、高等弁務官布令第六〇号に基づいて、講和前補償金管財人を設置して、支払い業務の体制を固め、さらに、業務を迅速かつ円滑に行うために、関係市町村と業務委任契約を締結した。
一方、補償獲得期成会では、補償金支払いの業務に対処するため、事務局職員を新規に採用し、業務面の強化をはかるとともに、米側の支払い業務を担当するDE(米陸軍地区工兵隊)と協議を行うなど、支払い業務の準備を整えた。
補償獲得期成会とDEとの間に、支払業務と支払方法について協議が始められたが、土地使用料の査定と事務経費の負担問題で、意見が対立して調整がつかず、支払い業務の遅延が憂慮された。そのため、急遽、招聘したヘメンディンガー弁護士が斡旋にたち、関係者間で慎重協議の結果、ようやく合意に達した。
土地使用料の査定については、キャラウェイ委員会における妥結基準額どおり査定すること、という沖縄側の主張が認められ、支払業務の際、DE側が、リストを作って再確認することになった。
また、DEの事務経費は、琉球政府が補正予算で、九万一、〇〇〇ドルを計上して支出することとし、とりあえず、補償獲得期成会から、三万ドルを流用することを申し合わせた。
この合意成立によって、一九六七年(昭四二)一月九日、民政府で「講和発効前損失補償金の支払いに関する業務に要する経費についての覚書」の調印が、ワーナー民政官、松岡行政主席、桑江補償獲得期成会長の三者の間で行われた。覚書の要旨は、次のとおりである。
1、一九六五年十月二十七日付けで署名、公布された「講和発効前損失補償支払い権限法」(米国公法第八十九の二百九十八号)により、米合衆国は、一九四五年八月十五日以降、一九五二年四月二十八日以前における米合衆国軍隊及びその要員の作為、または、不作為により生じた人身の死亡及び傷害ならびに私有財産の使用、損害について、琉球の特定の住民に対して、補償金を支払う。
2、米合衆国は、補償金の支払いに関する業務の一部を行うことになっている。しかし、米合衆国が行う業務に要する経費については、合衆国はこれを負担しない。この費用は、琉球政府が負担しなければならない。
3、琉球政府が負担しなければならない業務に必要な経費は、必要にして適正、かつ、最少限度において講和発効前損失補償獲得期成会を通じて、在沖米工兵隊(DE)にたいし、四半期ごとに前払いするものとする。この経費の支払いは、琉球政府の定めた法令にしたがって行うものとする。
以上の覚書の調印に次いで、一九六七年(昭四二)二月六日、ワーナー民政官は、松岡主席に対し、補償金の初回分として、総額百〇一万一、五六七ドル四五セントの小切手を交付した。そして、同年二月二十日、知念村、玉城村を皮切りに、補償対象者への支払いが始まった。
ところで、補償金支払いに際し、補償金に対する"課税"が問題となり、補償獲得期成会では当初から「講和前補償は損害賠償であり、課税所得と見るべきでない」と主張し、琉球政府側の「不動産による所得であるので課税所得とみなす」という双方の意見が対立していたが、結局、四〇〇ドルまでは課税しないよう措置することで、協議がまとまった。
琉球政府においては「講和前補償にかかる所得税の取り扱いについて」の通達によって緊急に対応することとしたほか、立法院においても、補償獲得期成会からの要請を受けて、一九六七年(昭四二)七月二十九日「講和条約発効前の補償金に対する所得税及び市町村税の特例に関する立法案」を承認・可決したことにより、懸念された課税問題も解決を見るに至った。
したがって、一九六八年(昭四三)七月二十九日には、補償金の最終分が琉球政府に交付され、同年十月十五日、すべての支払いが無事、滞りなく完了した。
【主要参考資料】
- ・講和発効前補償解決の記録(講和発効前損失補償獲得期成会編、一九六九)
- ・沖縄対米請求権問題の記録(沖縄県対米請求権事業協会編、一九九四)

