一般社団法人沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)
沖縄の軍用地に関する問題解決、地主の財産権の擁護及び福利増進を行っています。
第四節 駐留軍用地跡地の利用促進に関する特別措置要請の経緯
一 基地負担の軽減
我が国における駐留軍用地の実態を見ると、国土面積の約〇・六パーセントに過ぎない狭溢な沖縄県に、在日米軍専用施設・区域の約七五パーセントが集中し、県土面積の一〇・四パーセント、人口や産業が集中する本島の一八・八パーセントを占めている点が注目される。これは、静岡県(一・二パーセント)、山梨県(一・一パーセント)等駐留軍用地を抱える他の都道府県と比較しても数字的には目立っている。
高密度の駐留軍基地の存在は、良好な住環境の整備、計画的な都市づくりや産業団地確保等、本県の振興開発を進める上で制約要因のひとつと考えられる。
それだけに、県民の駐留軍用地に対する意識調査や選好度調査でも、調査時期、地域や老若男女を問わず、駐留軍用地対策として、その整理縮小を求める比率が常に高順位であり、県民世論との指摘を受ける。
こうした世論を背景に、歴代の県政も保革の何如にかかわらず、駐留軍用地問題を県政の最重要課題と位置付け、本県の駐留軍用地の整理縮小等の促進を日米両政府に訴えてきた。
特に、県知事による基地問題解決に向けた米国政府への直訴も一〇回余に及んでいて、徐々にではあるが、その成果が得られつつある。
わが国は、一九五二年(昭二七)の日米安保条約の締結後、ソ連を中心とする東欧諸国の社会主義体制崩壊による冷戦の終えんに至るまで、米軍の世界展開の重要な戦略拠点であった。その中でも本県は、敗戦に続く占領から二七年にわたる米軍統治を経て、復帰後も幾多の米軍施設・区域が存在し、主要作戦基地や前方展開基地として位置付けられることになった。
東西冷戦終結後、在欧米軍人・軍属及び家族数や施設・区域は大幅に削減されたが、日本本土及び本県における部隊や基地には基本的に大きな変化はなかった。ただ、軍事的重要性が低く小規模な施設・区域は、返還されたが、本土と本県では相違が見られる。
本土においては、一九五七年(昭三二)六月の岸総理大臣とアイゼンハワー米大統領の会談で、在日米軍の大幅削減方針が明らかにされてから、特に都市地区では、基地周辺地域の急速な開発に伴い、住民の要望に応える形で、遂次、駐留軍用地の返還及び移設が進められてきており、一九七二年(昭四七)以降でその約六〇パーセントが整理・統合された。
一方、本県における駐留軍用地の整理・統合については、日米の安全保障問題を協議する場である日米安全保障協議委員会(SSC)で、三次にわたり施設・区域の整理統合計画が作成された。即ち一九七四年(昭四九)に開かれた第十四回安保協で三事案、一九七五年(昭五〇)第十五回安保協で四八事案、一九七六年(昭五一)安保協で一二事案、延べ六三事案四、六七一ヘクタールの全部又は一部の返還及び移設が了承された。
これらの計画は遂次実施され、面積にして三、一一〇ヘクタールの返還が実現し、現在、四事案一、五五一ヘクタールが未処理として残されている。又、西銘沖縄県知事の二度にわたる訪米要請行動や知事と県内関係市町村長からなる協議会(いわゆる軍転協)の要望書提出等を踏まえ、検討を行っていた日米合同委員会は、一九九〇年(平二)六月十九日、県知事要望事案三件、安保協事案九件、軍転協事案八件及び米側事案三件の計二三件(いわゆる二三事案)について、返還に向けた所要の調整・手続きを進めることを確認した。二三事案については、二〇〇二年(平一四)までに一六事案五八〇ヘクタールが全部返還、三事案七七ヘクタールが一部返還、残り四事案が未返還となっている。
本県における駐留軍用地問題の最大な不幸は、それに関連する何らかの事件・事故が発生して社会問題化し、その都度対しよう療法的に政治的解決が図られてきたことである。ただ、一方では一九九五年(平七)に発生した駐留軍用地を巡る強制使用問題や米軍人による悲惨な少女暴行事件等が大きな契機となり、皮肉にも問題解決を促進させる要因になった。
特に少女暴行事件は、県民のうっ積した不満を爆発させ、同年十月二十一日、八五、〇〇〇人の県民が参加する、復帰後、最大規模の県民総決起大会の開催に発展し、地位協定の見直しと駐留軍用地の整理縮小を決議するに至った。
県内におけるこうした駐留軍用地問題を巡る動向は、県内外の世論を喚起、議論を展開させ全国的問題として日米両政府を動かすことになった。
日米両政府は、一九九五年(平七)十一月、沖縄県民の負担を軽減し、日米関係を強化する目的で「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会」(SACO)を設置し、一九九六年(平八)十二月の最終報告で普天間飛行場の全面返還を含む一一施設・区域を返還することで合意した。
SACO最終報告で返還合意した施設・区域の面積は、五、〇〇二ヘクタールで県内駐留軍用地面積の二一パーセントに相当するが、その内、七施設・区域が県内移設という条件付きになっている。ところが、県内には移設先の確保ができず、合意から九年余を経過した今日でも返還されたのは、安波訓練場とキャンプ桑江北側の二施設・区域に止まっている。
本県における駐留軍用地の整理・統合は、基本的には在日米軍施設・区域の統合計画に基づき、世界の特に北東アジアの政治的・軍事的情勢や県民感情に配慮しつつ、日米安保委や安保協等の議論を踏まえ実施されてきた。
駐留軍用地は一九七二年(昭四七)五月十五日の復帰時、二万八、六六一ヘクタールから約三十年後の二〇〇二年(平一四)三月三十一日までに四、七〇九ヘクタールが返還され一六・四パーセント減少したことになる。しかし、何如に駐留軍用地の返還・縮小が県民世論とはいえ、それが実現すれば、万事、解決とはいかない現実が存在することを忘れてはならない。
二 地権者の現状
特に、本県における駐留軍用地の所有形態が、本土のそれと比較して、個人や法人等の民間や県・市町村等の地方公共団体の保有比率が約六六パーセントと高く、地権者の生活や地方自治体の財政問題とも深く係わってくるからである。本稿ではその点を強調しておきたいと考える。
地権者の現状について、沖縄県が一九九九年(平一一)三月に実施した駐留軍用地等地権者意向調査から見ると、年代構成は六〇歳以上が六一・五パーセントで高齢化が進んでおり、それに伴って職業別では四九・七パーセントが無職と半数近くになっている。
又、時の経過に伴い、軍用地の所有面積が細分化されつつあり、一、三〇〇平方メートル未満が五二・一パーセント、軍用地料も年間二〇〇万円未満が五五パーセントを占めている。軍用地料の使途も生活費(七六・三パーセント)や借金の返済(二〇・四パーセント)等に充当していることから、軍用地料収入が無くなった場合には、非常に困る(四八・七パーセント)やや困る(二七・四パーセント)と回答した地権者が七六・一パーセントの高い比率になっている。
地権者には、軍用地が返還されても、短期間で収入を得る妙策があるわけでもなく、返還跡地の遊休化が長期化すれば、資産の所有は固定資産税等税制面で大きな負担となり、地権者が大きな損失や利益を被ることになる。
他方、県内五二市町村のうち、三一市町村が駐留軍用地を所有し、それに関連して基地周辺整備法に基づく各種事業助成金、調整交付金、基地交付金及び賃貸料等の財産運用収入を得ている。これらの基地関連収入が当該三一市町村の歳入総額に占める割合は六・六パーセント、約三三二億円に上り、かつ、ほとんどが一般財源として使用可能なだけに、基地のない市町村に比べ、財源が豊かで財政構造もより弾力的になっている。
もし、これらの基地関連収入が大幅な減少、又はゼロになった場合には財政的に大きな打撃を受けることになる。
これまで述べたとおり、本県の駐留軍用地の所有形態の特徴からも、駐留軍用地跡地については、官民一体となって時を移さず、有効・適切な計画の策定・実施を行い、地権者の収入の確保や財源を涵養していく体制が必要である。実際に、一九六一年(昭三六)以降、二〇〇二年(平一四)三月三十一日現在までに返還された駐留軍用地の跡利用の現状を見てみよう(表第一‐次頁)。
三 跡地の利用状況と課題
| 平成14年3月31日現在 単位:千㎡、% | |||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 市町村名 | 返還面積 | 公共事業 | 個人・企業の利用 | 自衛隊の利用 | 米軍再提供 | 保全地 | 利用困難地等 | ||||||||||||
| 完了 | 実施中 | 計画中 | 小計 | 返還面積 | % | 返還面積 | % | ||||||||||||
| 返還面積 | % | 返還面積 | % | 返還面積 | % | 返還面積 | % | 返還面積 | % | 返還面積 | % | 返還面積 | % | ||||||
| 北部計 | 77,496 | 18,130 | 23.4 | 29 | 0.0 | 14 | 0.0 | 18,173 | 23.5 | 8,103 | 10.5 | 306 | 0.4 | 2,825 | 3.6 | 36,759 | 47.4 | 11,329 | 14.6 |
| 中部計 | 24,870 | 10,964 | 44.1 | 2,391 | 9.6 | 45 | 0.2 | 13,400 | 53.9 | 8,061 | 32.4 | 427 | 1.7 | 379 | 1.5 | 1,389 | 5.6 | 1,214 | 4.9 |
| 南部計 | 15,920 | 4,311 | 27.1 | 2,917 | 18.3 | 1 | 0.0 | 7,229 | 45.5 | 3,010 | 18.9 | 3,411 | 21.5 | 42 | 0.3 | 2,208 | 13.9 | ||
| 宮古計 | 420 | 306 | 72.9 | 306 | 72.9 | 114 | 27.1 | ||||||||||||
| 八重山計 | 25 | 25 | 100.0 | 25 | 100.0 | ||||||||||||||
| その他 | 23 | 23 | 100.0 | ||||||||||||||||
| 合 計 | 118,754 | 33,736 | 28.4 | 5,337 | 4.5 | 60 | 0.1 | 39,133 | 33.0 | 19,174 | 16.1 | 4,281 | 3.6 | 3,205 | 2.7 | 38,190 | 32.2 | 14,751 | 12.4 |
| (注1) 平成14年3月末現在の市町村報告に基づく調査結果に、復帰前の返還面積(跡地利用状況面積)について、一部、県資料による追加修正を行った。 (注2) 返還面積は、昭和36年から平成14年3月31日までに返還された駐留軍用地及びVOA施設等の累計である。 (注3) 市町村報告に基づく返還面積(跡地利用状況面積)は、概数である。 (注4) その他は、市町村特定ができなかった跡地である。 |
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返還駐留軍用地のうち、公共事業の対象地域は三、九一三・三ヘクタールで全返還面積の三三パーセントとなっており、三、三七三・六ヘクタールで事業を完了、実施中のものが五三三・七ヘクタール、残りの六ヘクタールが計画され、順次、実施されることになっている。
地域別では、北部地域で土地改良、農地改良、水資源、道路整備等の事業が主として実施され、中南部地域では、宅地開発や公共施設用地の需要が高く、都市地域を中心に土地区画整理や公共施設整備事業等、農村地域では、土地改良総合整備や農業基盤整備事業等が実施されている。
個人・企業利用の跡地面積は一、九一七・四ヘクタール(全返還面積の一六・一パーセント)であり、北部地域では、農用地やリゾート施設等として、中南部地域では農用地、宅地、リゾート施設、ゴルフ場、ホテル及び植物園等として、各々活用されている。米軍から返還後、自衛隊基地として利用されている跡地は四二八・一ヘクタール(三・六パーセント)で、そのほとんどが南部地域に集中している。
一方、再度、米軍に提供された跡地も三二〇・五ヘクタール(二・七パーセント)を占め、その大部分は北部地域の訓練場である。これら以外にも保全地として利用されている跡地は三、八一九ヘクタール(三二・二パーセント)で、公共事業対象に次いで大きな規模を占めている。その大部分は北部地域の訓練場跡地であり、自然環境保全、水資源涵養林、災害防備林等良好な自然環境が図られている。
傾斜地等地形的な理由で使用不能であったり、無人島で開発の制約等、利用困難地も一、四七五・一ヘクタール(一二・四パーセント)に上っている。
駐留軍用地跡地が公共事業の導入により、各々の地域における商工業の拠点、良好な新興住宅地、優良な農産地等として、地域振興に大きく寄与しつつあることは評価される。しかし、実際に利用に供されるまでには、返還から事業認可まで平均六年三ヶ月、事業完了まで平均一五年八ヶ月にわたる土地の遊休期間があり、決して順調に推移してきたわけではなく、地権者は、返還跡地の利用対策の長期化で、賃貸料は入らないが、税金はしっかり払うわけでダブルパンチを蒙ることが多かった。
なぜ、跡地利用がこれ程までに遅延したのか色々な要因が考えられる。先ず、行政サイドの跡利用への取り組み体制や施策の遅れ等であり、駐留軍用地跡利用計画問題を所管する省庁が存在しないと云うことである。国の縦割り行政の下で、防衛施設庁は、現に駐留米軍が使用する施設・区域の取得・建設・管理や施設・区域周辺対策等を管掌するが、解放された土地は権限外であるとし、総務省も跡地への諸事業は所轄外であると、全く取り合わなかった。
又、当時の建設省や農林省等事業官庁が、公共事業として採択するには、対象地の規模などの適用要件があり、駐留軍用地跡地というだけで特別な優先制度は存在しない。
ただ、国庫補助事業として採択されれば、沖縄振興開発特別措置法で補助率のかさ上げがされただけであった。
次に、返還のあり方も跡利用の大きな阻害要因となっている。現在、駐留軍用地については、国と地権者間で土地の賃貸借契約が締結されているが、契約の解除権が国側に留保され、不要不急の駐留軍用地については、一方的に一ヶ月前の通告を以って駐留軍用地の返還が実施されてきた。しかも、全部返還であれ、一部返還であれ、部分返還、即ち、細切れ返還の繰り返しで、返還が実施された。
復帰後、二〇〇二年(平一四)三月三十一日まで全部又は一部返還された七六施設のうち、返還の繰り返し回数二五五回、一括返還二八回、部分返還二二七回で、八九パーセントが部分返還の繰り返しとなっていて、跡地利用の困難性に拍車をかけている。
駐留軍用地として利用度の低い傾斜地、山間地、無人島等の土地はいち早く返還されたが、有効な跡利用が図れるようなところではない。更に、跡利用の障害になっている要因に地権者合意形成の困難性がある。集落ごと駐留軍用地に接収され今日に至った経緯の中で、零細な地権者が多数存在するのに加えて、相続等による世代交代、売買による他地域からの参入、生活根拠の転出入などにより跡利用に対する考え方や意識が多種多様となっていることから、地権者の合意形成は容易ではない。地権者の合意形成は避けて通れないだけに、合意形成期間を考慮に入れて早い時期に返還を提示する必要がある。
加えて、駐留軍用地内における地籍未確定地域の存在も跡地利用に大きな障害を与えかねない。
この問題については、一九七七年(昭五二)のいわゆる地籍明確化法の施行に伴って、二〇〇五年(平一七)五月三十一日現在、駐留軍用地面積の約九九パーセント確定しているが、なお五施設・区域に地籍不明地が存在している。
相続や売買等による権利の移動や所有権回復が承認されていくなかで、これらの土地は登記に反映されないばかりでなく、跡地利用の促進と云う観点からも留意すべき問題であり、抜本的対策が急がれる。
その外にも、駐留軍用地跡地に多くの貴重な文化財が埋蔵されていたり、あるいは一九九五年(平七)十一月に返還された恩納通信所にみられたようなPCB等有害物質の検出など、その処理に予想以上の時間がかかることも跡地利用事業の遅延の原因になっている。
最終的には、効率的、効果的な跡地利用を推進するには、遅延要因・障害要因を排除するとともに、十分な跡利用策定期間の確保、跡利用事業への財政的な特例措置、地権者へ一定期間の補償措置等、国の責任において講じていく必要がある。
今次大戦において、本県は本土防衛主戦場としてその盾となり、幾多の尊い県民の生命や財産等一木一草に至るまで灰じんに帰し、戦後は母国より分離され、二七年間に及ぶ異民族の統治下で苦しみ現在なお、駐留軍施設・区域が約七五パーセントも集中しているという歴史的経緯がある。県民に過重な負担を背負わせているのは、つまるところ国策遂行に起因していることを考えれば、国は跡地利用にも積極的かつ最大限の努力を傾注すべきである。
四 返還措置の立法化要請
(一) 軍転特措法の内容と課題
このようなことを背景に、市町村、沖縄県軍用地地主会連合会(土地連)は、駐留軍用地跡地に係る特別措置法の早期立法化を国へ要請してきた。その結果、議員立法として成立したのが「沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律」(以下、軍転特措法という)である。
軍転特措法の成立過程については、別節で詳細に記述しているので、ここでは同法律の概要について述べることにする。
軍転特措法は、十七条と附則で構成され、その主な内容は、法律の目的とその達成に向けた国、県及び関係市町村の協力提携、国の駐留軍用地返還の通知及び返還実施計画策定の責務、駐留軍用地返還時の地権者等への措置、県や関係市町村の総合計画策定の役割及び国の総合計画事業への措置等を規定している。
先ず、この法律の目的として、駐留軍用地の返還に伴い特別の措置を講じ、沖縄県の均衡ある発展並びに住民の生活の安定及び福祉の向上に資することとし、国は、返還合意した駐留軍用地については、土地所有者等へ通知するとともに、県知事や関係市町村長の意見を聴いて、返還に係る区域や返還予定時期等についての返還実施計画を定めなければならない。(第一条、五条、六条)
次に、国は、駐留軍用地を土地所有者等に土地を返還する場合、当該土地を原状回復するとともに、所有者等が引き続きその土地を使用せずかつ収益していない時は、返還の翌日から三年間貸借料相当額の給付金を支給する。(七条、八条)
給付金の支給額は一所有者につき一年間で一、〇〇〇万円、三年間で三、〇〇〇万円を最高限度額とし、その期間内に補償金等何らかの金銭的給付を受けていればその額を減額する。
更に、県知事や関係市町村長は、返還合意された駐留軍用地又は駐留軍用地跡地を広域的ないし地域的観点から総合的に整備する必要がある時は、所有者等の意見を聴いて各々総合整備計画を策定することができる。(十条、十一条)
国は、県や関係市町村が総合計画に基づく土地区画整理や土地改良事業等の公共事業を行う時には、国有財産の活用等事業が円滑に実施されるよう必要な措置や適切な配慮をする。(十四条、十五条)
以上が軍転特措法の概要であるが、国は、この法律の円滑な実施に努めるとともに、施行に関し、法律の規定する権利や事業等を同法施行令で、給付金の支給についての手続き等を同施行令や総理府令で定めている。
従来は、駐留軍用地の返還に関しては、国と地権者間の土地賃貸借契約第五条及び第十六条に基づく返還三〇日前通知と当該土地については原状回復義務があり、地権者には一般管理費として、三ヶ月以内の賃貸料相当額が補償されたのみであった。跡地に対する国や県・関係市町村の公共的関与はなく、返還後は、野となれ山となれと放置され遊休化した。それだけに、軍転特措法の施行は、その規定が忠実に履行されれば、有効・適切な対策が期待されるので評価するにやぶさかではない。
しかし、尚、法律には不備な点が多く跡地利用対策はこれで万全とは決していないことも確かである。
このことは、議員立法の成立に関与した上原康助代議士(当時)と仲村正治代議士は、次のように述べている。
上原代議士は軍転特措法に関し「現行給付金の支給期間はあまりに短い。環境汚染が発覚すると浄化されるまで時間がかかり跡利用が潜る。浄化期間中の特別管理費は給付金の算入期間に含まれるべきではない。返還軍用地の跡利用計画の策定・着手まで平均六年三ヶ月かかっており、給付期間は七年以上必要だ。又、億単位の地料が財政に組み込まれている市町村への影響を抑えるためにも、給付金の上限一、〇〇〇万円撤廃も不可欠だ」。
仲村代議士も給付期間三年について「土地返還後に建築物の撤去などの原状回復まで借料三ヵ月分が一般管理費として支払われたのに対し、軍転特措法の制定で補償金と給付金の合算で借料三年相当分を給付金として支払うことになった。当初の議員立法では返還までの予告期間内で三年、返還後の補償期間で三年の計六年の給付を想定したが、三年に切り詰められた。基地返還から跡利用計画の認可着手まで平均六年三ヶ月、事業完了まで平均一五年八ヶ月かかっている。地主への給付金は最低でも六年は必要だ」と、両代議士とも給付金の延長に言及している。
両代議士の指摘と併せて軍転特措法適用第一号になった恩納通信所跡地は給付金の問題点を浮き彫りにした事例ともなった。
同通信施設は、一九九五年(平七)十一月三十日に全面返還されたが、当該施設に所在する地上物件(国有財産)を撤去する際に、汚水処理槽内の汚泥からPCB等の特定有害物質が検出され、県内にこれを処理・保管する施設がないため、これを除去するのに特別管理期間二年一ヶ月及び一般管理期間三ヶ月でトータル二年四ヶ月の長期間を要した。その後、一九九八年(平一〇)三月二十五日を起算日として、約八ヶ月分の給付金が地権者に支払われた(「表第2」)。
特別管理費処理要領によれば、特別管理期間即ち、工事期間等には特に定めはない。その間、地権者に特別管理費補償があるとはいえ、国の都合で当該返還地の使用不能の状態に至った期間を、地権者の給付金受給期間に加算するのは返還軍用地の実態に照らし現実的ではない。
原因者負担で、本来なら米軍が補償すべきであるが、地位協定上不可能であれば、当然、国の責任と費用で処理すべきもので或ると考える。軍転特措法制定後、最初の恩納通信所の事例に見られるように、給付金に限っても、その支給開始日、期間、額等問題が表面化した。
このような状況に鑑み、土地連においては、二度にわたって特別委員会を設置し、軍転特措法をあらゆる角度から慎重かつ詳細に検討し、各条項ごとに問題点を洗い出し、その結果をまとめて、次のように要請を行っている。
(以下要旨)
「表第2」
第八条 給付金の支給等について
- 1、「返還日」については、土地所有者等が「当該土地の引渡しを受けた日」とすること。
「返還の起算日」が補償問題との係わりで、重要な要素となるだけに、土地所有者の不安解消のためにも、実態に即し、土地所有者が「引渡しを受けた日」を返還日として位置付けるべきである。 - 2、給付金支給期間については、現行の三年を七年にすること。
現行法による給付金支給期間は、当該土地の返還を受けた日(契約解約日)の翌日から使用、収益していないことを条件に最高三年間としているが、過去における「返還駐留軍用地の公共事業施行に関する遊休化状況」から鑑みた場合、期間が短すぎる。
駐留軍基地として接収・構築使用されてきた「歴史的経緯」を考えれば、国は、駐留軍用地跡地に国庫補助事業が導入された場合、その事業認可に必要な期間七年度に支給期間を延長すべきである。 - 3、給付金については、支給期間の全期間、賃貸借算定の例により、算定された額を支給すること。
給付金の額については、第八条第二項及び三項で「返還の属する年度に国が当該土地について支払った賃借料」―「一の所有者等について一年間に支給する給付金は一、〇〇〇万円」等、規定しているが、毎年の賃貸料算定の例により、上限を設けることなく措置すること。 - 4、給付金支給開始日については「特別管理費処理要領(調達規第三二二号)」に基づく国有財産等を完全撤去し、特別管理費補償期間の満了日の翌日起算日とすること。
給付金支給開始日については、その始期を返還日とすることは国の現行法規、返還駐留軍用地の実態等に照らし、合理的かつ現実的でない。返還後における民公有地の使用不能期間は当然、国の責任と費用で処理すべきであり給付金の支給期間と特別管理費補償期間とは重複すべきではない。 - 5、給付金の支給について、当該地主会の代表が一括申請し受領する場合には、その事業経費に必要な措置を講ずること。
給付金の支給申請は個々の土地所有者が行うことになっているが、高齢化等で申請に必要な書類の記載や取得で支給事務に支障をきたすことが懸念される。実際、恩納通信所の事例では、駐留軍用地の返還により軍用地主会会員の資格を喪失した土地所有者の給付金支給申請受領の事務手続きを、軍用地等地主会が代替した経緯がある。
今後とも、返還駐留軍用地の給付金支給に関し、このようなことが容易に予想されることから、その場合には、必要な事務経費措置を講じられたい。
第九条 調査及び測量について
国は返還合意された駐留軍用地について、本条が実質的に機能するよう環境調査の事前実施並びに跡地利用促進のための政令等の整備確立を講ずること。
駐留軍用地の調査及び測量は、跡地利用を円滑に進める上で、早期に実施しなければならない不可欠な条件である。駐留軍用地内には、関係者の調査等から幾多の貴重な文化財が埋蔵、存在していることが明らかになっている。又、駐留軍用地の使用状況等によっては、特定有害物質の検出も十分予測される。本条の規定する円滑な調査及び測量が実質的に機能するには、単なるあっせん申請ではなく、米軍との確固とした事前調整など、国の積極的な対応と責任が必要である。
第十四条 駐留軍用地跡地等の利用促進のための措置について
- 1、沖縄県に所在する駐留軍用地については、その特殊性及び跡地利用の促進を考慮して、公有地拡大に関する法律その他関連する法律の適用措置を講ずること。
「公有地の拡大の推進に関する法律」によれば、地方公共団体による土地の「先行取得」は、都市計画区域内に限定されており、駐留軍用地は適用外となっている。現状では、公有地の占める割合が低い駐留軍用地ほど公共施設用地のための「先行取得」の数量は増大され、その分、土地所有者の負担も大きくなる。同法の適用措置が講じられれば、跡地利用計画もより迅速、円滑に推進されることが期待される。 - 2、駐留軍用地所在市町村等が、返還軍用地の跡地利用を促進するために行う事業については、特別な行財政措置を講ずること。
駐留軍用地関係市町村が、返還駐留軍用地跡地の利用のため土地区画整理事業や土地改良事業等の公共事業を実施するには、脆弱な財政事情下にあるだけに、対応費や、事業費等の捻出が困難である。駐留軍用地跡地の公共事業には、事業採択や実施のために行政的な特例措置や財政的な特例措置が必要である。
第十五条 国有財産の活用について
駐留軍用地及び駐留軍用地跡地等に所在する国有財産の活用並びに処分については、基地形成の特殊事情を考慮し国有財産法にとらわれず、特別な措置を講ずること。
駐留軍用地跡地の整備事業には、膨大な財政資金の投入が必要なことから、県や関係市町村の総合整備計画事業への行財政措置と併せて、国有財産についてもその譲与又は無償貸付の特別措置が必要である。
(二) 新たな制度の確立を求める
軍転特措法は、その適用第一号となった恩納通信所跡地に照らし合わせて見ても上述の如く、法の趣旨を含む色々な問題点が多いことから、土地連はその改正方針について、県とも緊密な連携をして国へ要請活動を展開してきた。
そのような中で沖縄県は、一九九九年(平一一)八月に、駐留軍用地所在関係市町村や土地連の要請を踏まえ、「沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律の改正」四項目及び「駐留軍用地跡地利用促進のための新たな制度の確立」二項目を内容とする「駐留軍用地跡地利用の円滑な推進に関する要望書」を国へ提出した。その内容の項目及び要旨でみると次のようになっている。
一、「沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律」の改正について
- (1) 「返還実施計画」で定める事項の追加
- (2) 「給付金支給」要件の改正
- (3) 「調査・測量」の早期実施
- (4) 「国有財産」の活用
二、駐留軍用地跡地利用促進のための新たな制度の確立について
- (1) 駐留軍用地跡地等の利用促進のための行財政上の措置
- (2) 駐留軍用地跡地利用の実施体制の整備
県は、先に述べた土地連の「給付金支給要件の改正」「調査・測量の早期実施」及び「国有財産の活用」に加え、特に、駐留軍跡地対策の大きな遅延要因になっている「返還実施計画への追加」「行財政上の特別措置」及び「実施体制の整備」等を盛り込み、国へ要望した。(要請内容省略)
国はこのような県の要請等に基づき協議を重ね、これを受け入れる形で一九九九年(平一一)十二月、「駐留軍跡地利用の促進および円滑化等に関する方針」を閣議決定した。
その概要は、跡地利用の促進及び円滑化のために
- (1) 県と関係市町村間に調整機関を設置する
- (2) 駐留軍用地跡地全体に調査・測量への早期対応、国有財産の活用、及び返還の実施計画に定める事項の明示等については共通した措置を取る
- (3) 大規模駐留軍用地跡地利用の促進に関しては、再開発事業を迅速かつ的確に推進するため、国の方針の策定や事業主体の業務の特別措置を取る
- (4) 給付金に関しては、大規模駐留軍用地跡地と大規模駐留軍用地跡地以外の駐留軍用地跡地に特例措置を講ずる
(3)(4)については、新たな法制の整備により対応することとなっている。
五 沖振法で特別措置
沖縄振興開発特別措置法や軍転特措法が二〇〇二年(平一四)に期限切れになることもあって、国サイドでは、県の要請等に沿い、ポスト第三次沖振計の根拠法ともなる沖縄振興新法の成立に向け取り組んでいた。
最終的には、沖縄振興特別措置法の成立(平成十四年三月二十九日成立、同年四月一日施行)に伴い、その第七章に「駐留軍用地跡地の利用の促進及び円滑化のための特別措置」が盛り込まれた。
その中で国の取組方針の策定及び県や関係市町村等地方公共団体の総合整備計画の策定等国や自治体の責務と併せて、大規模跡地や特定跡地の指定や給付金支給の要件、跡地利用に関する法制上の枠組み等が確保された。
尚、二〇〇二年(平一四)六月十九日でその効力を失うことになっていた軍転特措法については、ほぼ同じ内容で期限が沖振法付則で延長されることになった。
ちなみに、沖振法第七章「駐留軍用地跡地の利用の促進及び円滑化のための特別措置」の概要は次のようになっている。
先ず、第一節は、駐留軍用地の利用に関する基本原則等で
(1) 第九十五条は、駐留軍用地跡地の利用に関する基本原則として国、沖縄県及び跡地関係市町村は、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を促進しなければならない。
(2) 第九十六条は、国の責務として国は駐留軍用地の有効かつ適切な利用を促進するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(3) 第九十七条は、地方公共団体の責務として、沖縄県及び跡地関係市町村は、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を促進するためその整備計画の策定その他の措置を講ずるよう努めなければならないとしている。
第二節では、大規模跡地の指定等で、大規模跡地や特定跡地の各々の指定要件や国の取組方針並びに県総合整備計画及び市町村整備計画の策定等を規定している。大規模跡地及び特定跡地の要件は法律及び政令によれば、次のようになっている。
大規模跡地の指定要件について
(1) 第九十八条は、大規模跡地の市街地の計画的な開発を行うことが必要と認められ、かつ、原状回復及び開発整備に長期間を要し、沖縄の振興の拠点となると認められるもの。
(2) 沖振法施行令第三十四条は、大規模跡地の面積が三〇〇ヘクタール以上で一団の土地であり、その土地が既成市街地に隣接していること。
又、特定跡地の指定要件については
(1) 第百一条は、特定跡地が開発整備を行うにあたって原状回復に相当の期間を要し、計画的な開発整備が沖縄の振興に資すると認められるもの。
(2) 沖振法施行令第三十五条は、土地の面積が五ヘクタール以上であるとする。
第三節では、大規模跡地給付金の支給等として大規模及び特定跡地給付金の要件について規定している。その支給要件は法及び施行令では次のようになっている。
先ず、大規模跡地の給付金について
(1) 第百三条は、大規模跡地の給付金について返還日の翌日から引き続き三年を超えて当該土地を使用収益していない時は、返還の翌日から三年を経過した日から当該所有者等の申請に基づき、大規模跡地給付金を支給することとし、支給の限度となる期間その他必要な事項は政令で定める。
(2) 沖振法施行令第三十六条は、大規模跡地給付金の支給の限度となる期間、大規模跡地における市街地の計画的な開発整備等の見通しを勘案して、別に政令で定める期間とする。
又、特定跡地の給付金支給については
(1) 第百四条は、特定跡地の給付金については、返還日の翌日から引き続き三年を超えて当該土地を使用収益していないときは、返還日の翌日から三年を経過した日から当該所有者等の申請に基づき、特定跡地給付金を支給することとし、支給の限度となる期間その他必要な事項は政令で定める。
(2) 沖振法施行令第三十七条は、特定跡地給付金の支給の限度となる期間は、特定跡地における原状回復に要する期間を勘案して、別に政令で定める期間とする、となっている。
以上は、「駐留軍用地跡地の利用の促進及び円滑化のための特別措置」が盛り込まれた、平成十四年四月一日施行の沖縄振興特別措置法及び同法施行令の駐留軍用地跡地利用に関する条項の概要である。
六 結び
ところで米国は、米軍の戦略的構成に関する四年次見直しで、世界的な規模の安全保障戦略に必要な在外部隊と基地配置の検討を行っており、我が国とも、二〇〇五年(平一七)十月二十九日の日米安全保障協議会、いわゆる2プラス2で在日米軍部隊や基地の再編方針に合意し、これを中間報告の形で公表した。在沖米軍については、海兵隊員の七、〇〇〇人削減、普天間飛行場の辺野古沿岸域への移設、嘉手納飛行場以南の基地の返還等がその内容になっている。
合意内容の実現には、普天間飛行場の辺野古沿岸域への移設を前提に兵力や基地の削減がパッケージになっているが、沿岸移設案には地元の名護市や沖縄県、多くの県民が反対している。
一方、政府サイドは中間報告の微調整はあっても、大幅な修正はないとの立場であり、二〇〇六年(平一八)三月の最終報告で、どう決着を見、確定するかが大きな関心事である。仮にも政府の考え方に近い形で最終報告が出れば、その再編に伴う軍用地主や軍雇用員の生活や雇用問題及び市町村の財政、土地利用対策、地域経済社会等各方面への大きな影響が予想される。
特にこれまでのSACO事案に加え嘉手納飛行場以南の駐留軍用地が返還されることになれば、その跡地利用に関しても抜本的対策が急がれることになる。
就中、現在の軍転特措法や沖振法の返還等に関する規定は、給付金措置の充実化、返還前立ち入りによる事前調査測量の実施、大規模跡地要件の緩和等改正を要する条項が多く、県、関係市町村及び土地連等は今後とも一体となって、その改正に向け、強力な取り組みが要請されるところであると思料する。
【主要参考文献】
- ・沖縄を考える(大田昌秀教授退官記念論文集、一九九〇・一〇月)
- ・沖縄の地域開発と産業振興(白桃書房、一九九一・二月)
- ・日米安保と沖縄問題(社会評論社、一九九七)
- ・沖縄経済産業自立化への道(白桃書房、一九九〇・七月)
- ・沖縄県駐留軍用地等地権者意向調査報告書(沖縄県、一九九九・三月)
- ・沖縄の米軍基地(沖縄県基地対策室編、二〇〇三・三月


